妊娠中に発生するお口のトラブルを歯科医師が解説
妊娠中は、さまざまな身体の変化が起こります。
具体的には、ホルモンバランスや食べ物の好み、唾液の量などに変化が見られるようになり、これらはやがて口内のトラブルにも繋がります。
本記事では、妊娠中に発生する口内トラブルをいくつかご紹介しますので、気になる方はぜひご覧ください。
妊娠性歯痛
妊娠初期の方は、虫歯を発症しているわけではないにも関わらず、強い歯の痛みを感じることがあります。
こちらが、“妊娠性歯痛”と呼ばれる症状です。
ホルモンバランスが変化し、通常時と比べて血液量が30~50%ほど増加することで、歯髄の充血、神経の圧迫が起こり、歯の鋭い痛みに繋がります。
多くの方が妊娠中に発症するものですが、痛みはいつまでも継続するわけではありません。
通常、妊娠5~6ヶ月を経過すると、少しずつ痛みは和らいでいきます。
妊娠性歯肉炎
妊娠中に発生する口内トラブルとしては、“妊娠性歯肉炎”も挙げられます。
妊娠している方は、悪阻(つわり)による口内の清掃不良、間食の増加、唾液量の減少など、細菌が増えやすい条件が揃いやすいです。
これらの原因により、歯に付着するプラークが増加すれば、当然歯茎の腫れや出血といった症状が出ることは否めません。
その上、妊娠中の方は女性ホルモンが多く分泌され、全身の“血管透過性”も高まります。
血管透過性とは、血管の内外で水分、物質が行き来することをいい、こちらが高まることで、わずかな細菌による刺激でも、簡単に歯茎が腫れたり、出血したりしてしまいます。
妊娠性エプーリス
妊娠中に発生する口内トラブルには、“妊娠性エプーリス”も挙げられます。
こちらは、妊娠中口内の粘膜に部分的に生じる良性のしこりで、決して頻繁に発生するものではありません。
割合としては、妊婦の1~5%に見られます。
女性ホルモンの増加により、歯肉のコラーゲンが増殖したものと考えられていて、主に上顎前歯に現れることが多いです。
ちなみに、妊娠性エプーリスは、出産後に消失することが多いため、妊娠中は基本的に外科処置を行いません。
しかし、あまりにも症状が大きく気になる場合は、歯科医に相談することで処置してもらえる可能性もあります。